2017.8.20 JCF 「腎癌の最新治療」 東京女子医科大学 東医療センター泌尿器科 近藤恒徳教授 司会 ライター 小島あゆみさん 基本的な診断、治療についてと、最新治療動向として、部分切除、ダビンチによる部分切除術と免疫チェックポイント阻害剤について紹介がありました。 とてもわかりやすい説明と、聞き手が飽きないように?趣味のマラソンや東医療センター移転の話も挟んで話されていました。(東医療センターは4年後に足立区に移転するそうです) (1)診断、治療の流れ ・腎がん自体は男性は10万人に25人、女性は10万人に11人と少ない ・が、20年間で3害に増えている ・健康診断でわかる人が7割 ・検査としては、エコー(検査者の技量による部分あり)、CT(現在最も価値が高い)。 ・治療は手術と薬物が中心。放射線は効果があまり出ない。状況(高齢、体力)によっては経過観察もありうる ・薬物は、分子標的薬に次いで、免疫チェックポイント阻害剤が出てきた。サイトカイン(インターフェロン等)はあまり使われなくなってきている (1)腎部分切除について ・現在可能な限り部分切除を実施している。 ・根治的腎切除の場合、腎臓の機能が30%減、部分切除であれば10%減になる。 ・慢性腎臓病の発生頻度が上がることがデータで見えてきた 慢性腎臓病(たんぱく尿、eGFR 60未満)は自覚症状がないまま、動脈硬化による病気が突然起きることがある。根治的切除では65%, 部分切除では20%の発生頻度(実験データ上)。 ・全摘した場合、片方に再発する確率が5% ・女子医大ではステージ1は部分切除を実施している (2)ロボット手術について ・腹腔鏡手術は開腹に比べ回復早いが、手術が難しい(医師の技量による) ・器械が長く、一方向しか動かないという問題があった ・手術用ロボットは器械の動く向きが多く、手術の正確度が高くなり、出血量も少ない ・女子医大では、2016年は202例中152例がロボット。腹腔鏡はやらなくなった (3)薬物治療について ・分子標的薬が主流になってきている ・ただ、最初の薬の後、他の薬が効きづらくなる傾向がある。副作用(倦怠感、手足症候群など)もある ・免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ:商品名オプジーボ) 免疫からの攻撃を防ぐ仕組み(リンパ球とがん細胞でやりとり)を破壊し、がん細胞を攻撃できるようにできるもの。新しい免疫療法といえる。 ・ニボルマブ、エベロリムスで実験したところ、ニボルマブが効く結果が出た ・欧米の人よりも日本人が成績がよい ・30%の人に効く一方、30%の人は悪化することもある ・体力の低下、骨脳転移、進行が速い人などあわないケースもあるようだ ・副作用は、免疫関連の副作用。膠原病に似たような症状 ・今後、主流になるが、まだ使い分けや組み合わせは実験中 (4)質問をもとに話されたこと ・薬物の選択のポイントは、まず体力があるかどうか。年齢、体格、腎機能がポイント ・免疫チェックポイント阻害剤をどのぐらい継続できるかまだデータがない。効いている間は使いたい 脳転移があっても脳はガンマーナイフで対処し、使い続けるという策もある ・免疫チェックポイント阻害剤は最初からは使えない。まずスーテントなどから。使えない段階で候補になる。インライタも選択肢になる ・キートルーダは肺癌に効果のある薬として承認されたが、腎がんでは治験結果が出ていないため、腎がんにはまだ使えない。(膀胱がんなどの尿路上皮がんでは申請中だが) ・透析の人は普通の人の10-20倍、腎がんのリスクがある。生体移植も2,3倍だが、生体移植する方がベターと考える。透析していた期間にもよる ・肺転移がある場合、1,2個であれば手術するほうがよい ・顎の転移の場合。形成外科や口腔外科の先生に相談してもよいのではないか ・ダビンチは国内に250台ある。 また、部分切除のノウハウのある病院であることが必要